乳酸菌で抗うつ対策
うつ病と腸内環境の関係
増えるうつ病患者
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長時間労働や過労といった労働環境の悪化、人間関係や家庭内でのストレスによって近年ではうつ病患者数が増加傾向にあります。
厚生労働省が発表した調査では、2016年のうつ病などの気分障害の患者数は約111万人と調査開始以降で最多となりました。いまや国民病となったうつ病ですが、さまざまな研究によって腸内環境と密接に関係していることが分かっています。
腸内の善玉菌が少ないとうつ病のリスクが高まる
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私たちの腸にはビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌、大腸菌や黄色ブドウ球菌といった悪玉菌など数百種類100兆個以上の腸内細菌が生息しています。
この腸内細菌はそれぞれ種類ごとにまとまり腸内フローラを形成していますが、健康な人ほど善玉菌が活発で悪玉菌が抑制され、良好な腸内環境を保っています。この傾向は心の病気とも呼ばれるうつ病も例外ではありません。国立精神・神経医療研究センターとヤクルトの共同研究では、腸内の善玉菌が少ないと、うつ病を発症するリスクが高まることが分かっています。
【うつ病と腸内環境の関係を調べた研究】
研究では、うつ病患者43名と健康な人57名を対象に腸内の善玉菌を調べました。その結果、ビフィズス菌は便1g当たりの量で、健康な人は約100億個発見されましたが、うつ病患者の場合は約32億個と大きな差があることが認められました。さらにラクトバチルス菌では、健康な人は398万個見つかったのに対して、うつ病患者では79万個と約5倍もの差があることが分かりました。また、ビフィズス菌が約34億個以下の人はうつ病の発症リスクが3倍、ラクトバチルス菌が約309万個以下の人は2.5倍増加することも分かりました。腸内環境は脳の働きにも影響を与えることから、腸は第二の脳とも呼ばれています。腸内の善玉菌が減ることでうつ病の発症リスクが高まるのだとしたら、腸内環境が改善されることで、うつ病を予防することができそうです。
乳酸菌やビフィズス菌がうつ病の症状を改善する
腸内フローラのバランスが崩れることで、神経系の機能にも影響を及ぼすこと、うつ病や不安症に罹りやすくなる可能性があることは、これまでの研究で指摘されています。
この仮説を検証すべくアメリカのバージニア大学では、マウスを使った実験で神経系とストレスの関係について調べました。
実験ではマウスを過密ゲージに入れ、スポットライトで照らしたり、騒音を聞かせたりするなどして高ストレスを与え、腸内細菌の種類や量を測定しました。
その結果、マウスがストレスに晒されることで、ラクトバチルス属の乳酸菌が大きく減少していることが確認されました。
また少量の乳酸菌を与えることで、ストレスによって起こる異常行動が改善されることも認められました。この研究結果は「ネイチャー・サイエンティフィックレポート」にも掲載されています。
人間を対象にした臨床試験はまだこれからですが、乳酸菌やビフィズス菌を摂ることでうつ病の症状を改善する効果が期待されています。
現在、うつ病治療には副作用の強い抗うつ剤が多用されていますが、乳酸菌やビフィズス菌が摂れる食事に変えるだけでうつ病を治療できるとしたら素晴らしいことです。
セロトニンの分泌を促し抗うつ対策
セロトニンとは
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セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンから作られる脳内神経伝達物質の一つで、イライラ、不安、恐怖を鎮める作用があることから、幸せホルモンとも呼ばれています。
このセロトニンが不足すると、イライラや不安を感じやすくなり、気分が落ち込んだり、無気力になったりと精神的に不安定になります。
うつ病の人はセロトニンの分泌量が健康な人よりも少ないことが分かっていて、セロトニンの不足がうつ病を発症するきっかけにもなると言われているのです。
体内の9割のセロトニンは腸に存在する
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うつ病を予防するためには脳内で分泌されるセロトニンの量を増やす必要があります。体内には約10mgのセロトニンが存在していますが、そのうち脳内にはたった2%しかなく、全体の90%はなんと腸に存在しています。
つまりほとんどのセロトニンは腸にあるということです。
ですが脳にあるセロトニンが不足したからといって、腸から直接送ることはできません。
これではいくら乳酸菌で腸に働きかけたとしても、脳で作られるセロトニンの不足を補うのは難しいということになります。
腸内環境を整えてセロトニンの材料を脳に送る
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ところが腸でセロトニンを作り出している5-ヒドロキシトリプトファンという物質は、腸から脳へ移動することが分かっています。
この物質はセロトニンではありませんが、セロトニンの材料となる物質で、脳に送ることでセロトニンの分泌を促すことができます。そこで重要になるのが腸内環境です。善玉菌の働きが弱く腸内環境が悪化していると、セロトニンの材料を腸から脳に送ることができず、脳内のセロトニンも不足してしまいます。
乳酸菌を積極的に摂ることで腸内環境が整えられると、セロトニンの分泌促進にも繋がります。
抗うつ剤の副作用に効果的な乳酸菌
うつ病の治療には抗うつ剤が処方されますが、この治療薬には副作用もあります。抗うつ剤には抗コリン作用というものが働くことで、人によって個人差はありますが神経症状の副作用が引き起こされます。
その一つが食べ物を腸内で動かしながら排出させていく腸のぜん動運動が停滞することで引き起こされる便秘です。しかし、いくら便秘が辛くても抗うつ剤の服用を止めてしまうわけにはいきません。
このような副作用を解消するためには、腸の働きを活性化してぜん動運動を促す必要があります。下剤や整腸剤の服用も短期的には効果がありますが、依存性がありこちらも副作用を抱えています。
そこでおすすめなのが乳酸菌の摂取です。乳酸菌が作り出す乳酸には腸内を弱酸性に変えることで善玉菌の増殖を促し、さらに腸のぜん動運動を促す作用もあります。抗うつ剤を利用する場合は乳酸菌を一緒に摂り副作用に備えましょう。
抗うつ効果が期待できるラクトバチルス属の乳酸菌
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乳酸菌にもいろいろな種類があり、それぞれ効果も異なりますが、乳酸菌の抗うつ効果に関する研究はまだまだ発展途上にあります。現在のところ抗うつ効果を証明する明確なエビデンスを持つ乳酸菌は存在しないのが現状です。
しかし、先述のアメリカで行われた研究結果にもある通り、ラクトバチルス属の乳酸菌が有効ではないかと考えられています。
ラクトバチルス属とは、乳酸菌を種類ごとに分類したものの一つで、一般的には乳酸桿菌と呼ばれています。
古くからヨーグルト作りに使われていて、私たちにとって最も親しみのある乳酸菌です。代表的な菌種にはカゼイ菌、ブルガリア菌、ガセリ菌、ロイテリ菌、アシドフィラス菌があります。
人の消化管にも多数生息していますが、腸内フローラは人によって異なるため、全ての人の腸内で活発に活動しているわけではありません。もちろんラクトバチルス属の乳酸菌全てが抗うつに有効であるかどうかは分かっていませんが。私たちが普段食べているヨーグルトによって、うつ病を予防できるかもしれないのです。
仕事や人間関係によるストレスと疲労でうつ病の不安を感じている方は、ラクトバチルス属の乳酸菌を積極的に摂ってみてはいかがでしょうか。
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