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乳酸菌と大腸菌の関係性は

腸内に生息する大腸菌

ほとんどの大腸菌は無害

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大腸菌は人間の大腸や動物の消化管内に生息しています。酸素があってもなくても活動できる通性嫌気性菌です。
私たちの腸内には100兆個以上の腸内細菌が生息していますが、これらの菌は体に有用な善玉菌、体に有害な悪玉菌、そのどちらにもない日和見菌に分けることができます。
大腸菌は一部に毒性の強い病原性大腸菌や毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌を含む有毒株と、全く毒性のない無毒株があります。無毒株は悪玉菌ではなく日和見菌に分類されることもあります。
大腸菌と聞くと強い毒性を持つO-157などをイメージしますが、もともと腸内に生息している大腸菌は増殖しすぎない限り体に害はありません。

腸内では少数派

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人間の糞便からは必ず大腸菌が検出されます。食中毒や衛生問題が起こるとテレビや新聞で「大腸菌が検出された」と報じられ、汚染の象徴のような扱いがされています。
しかし、実際に私たちの腸内に生息する大腸菌の数はあまり多くなく、普段は大きな影響を与えることはありません。
成人の腸内で全体の約7割を占めているのはバクテロイデスやユリバクテリウスなどの日和見菌です。大腸菌を含めた悪玉菌の割合は健康な成人の腸内では1割程度と、腸内では少数派です。
善玉菌の代表であるビフィズス菌と比べても多くありません。成人の糞便1gあたりに検出される大腸菌の量は1000万~1億個程度、ビフィズス菌の1/100以下に過ぎないのです。

有用な働きもする

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悪玉菌の代表というイメージが強い大腸菌は、体に必要がない菌のように思えますがそんなことはありません。確かに増殖することで腸内を腐敗させ、便秘や下痢を引き起こし、免疫力を低下させるといった有害性を発揮します。
一方でビタミンの合成や消化吸収を促すといった体に有用な働きもしています。ですから大腸菌をなくせば良いというものではありません。
増えすぎると困りますが、一定の数が生息していないと私たちの体の機能を維持することができないからです。

大腸菌と善玉菌は共生関係にある

腸内で乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌と、大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌は絶えず勢力争いをしていますが、一方でお互いに共生する関係にあります。
そもそも体に有用な善玉菌がしっかりと働くことができるのは、対照的な存在である悪玉菌が居るからこそです。悪玉菌が存在しなかったら、善玉菌は自分を脅かす存在が居ないため十分な働きをすることはないでしょう。
もちろん共生関係にあるからといって体に有用とは限りませんが、悪い菌をただ減らせば良いというわけではありません。
大腸菌とビフィズス菌に限らず、善玉菌と悪玉菌、中間的な存在の日和見菌が微妙な関係によって繋がり共生することで、腸内環境を良好に保っています。
健康を維持するために大事なことは、単純に大腸菌を減らすことではなく、善玉菌を優勢にして腸内細菌の良好なバランスを保つことです。

毒性の強い病原大腸菌

大腸菌の中には毒性の強い病原大腸菌も存在します。赤痢のような血便や腹痛、発熱を引き起こす腸管出血性大腸菌、下痢や腹痛、発熱を引き起こす腸管病原性大腸菌、腹痛と激しい下痢を引き起こす毒素原性大腸菌などがあります。
これらの病原大腸菌は肉類の生食や鮮度が悪く加熱が不十分な食品、飲用に適さない水を摂ることで引き起こされます。いわゆる食中毒です。

その中でも1996年に大阪府堺市で、腸管出血性大腸菌O-157によって1万人以上の感染者を出した食中毒は多くの人が記憶していることでしょう。この食中毒をきっかけにO-157が日本各地で猛威を振るい、11人の死者を出しました。
病原大腸菌の中でもO-157やO-111は、時として100人を超える大規模な食中毒が発生し、重篤になると死亡することもある深刻な感染症です。
衛生状態が良い現代でも毎年のように感染者が発生しており社会問題になっています。とはいえ、基本的に衛生面に十分な配慮を行っている限りは、これらの病原大腸菌が私たちの腸内で増殖することはありません。

大腸菌の増殖を抑制するビフィズス菌

加齢や食生活によって増殖する大腸菌

ライフステージによって変化する大腸菌数

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腸内に生息する大腸菌の数はライフステージによって変化します。母親の体内に居る胎児の腸内は無菌状態です。出産のときに産道を通ることで口などから細菌が入り込み、初期の腸内フローラが作られます。
生後最初に増殖するのは大腸菌などの悪玉菌ですが、乳児の感染症を防ぐために授乳が始まるとビフィズス菌の割合が一気に増加します。授乳開始から1週間ほどで腸内細菌の95%をビフィズス菌が占めるようになります。
離乳するとビフィズス菌の割合は少しずつ低下し、代わりにバクテロイデスなどの日和見菌が増加します。成年期になるとビフィズス菌を含めた善玉菌の割合は2割前後で落ち着き、悪玉菌の数は比較的少ない安定した状況が続きます。
ところが成年期を過ぎて老年期に入ると、ビフィズス菌の数が減少に転じます。それによって、人によっては大腸菌の数が大きく増加し、腸内腐敗が進んでしまいます。

肉食に偏った食生活によって増殖する大腸菌

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大腸菌などの悪玉菌は小腸で消化しきれなかった栄養素をエサにして活動しています。その中でも大好物としているのが、肉類に豊富に含まれる動物性たんぱく質と脂質です。
そのため肉食に偏った食生活を続けていると大腸菌の増殖を引き起こし、ビフィズス菌の働きが弱くなってしまいます。

とはいえ若い頃は多少乱れた食生活を送っても、乳酸菌や野菜をたくさん摂ることで腸内フローラがすぐに元の状態に戻ります。
しかし、中高年になるとそのような無理が効かなくなります。若い頃のように腸に負担のかかる食生活を送っていると、腸内フローラが悪玉菌優勢で固定されて腸内腐敗が進行してしまいます。
食事の栄養バランスが偏っている方は、加齢によって大腸菌が増殖する前に食生活を見直す必要があります。

大腸菌の増殖を抑制するビフィズス菌

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腸内の大腸菌の増殖を防ぐために重要な働きをするのがビフィズス菌です。大腸に生息するビフィズス菌が活発であれば、殺菌力の強い酢酸を大量に生成することで大腸菌の増殖を抑制します。
なお、ビフィズス菌は乳酸菌の一種ですが生息する場所が違います。酸素があってもなくても活動できる通性嫌気性菌の乳酸菌は主に小腸で活動します。
大腸菌が生息しているのは主に大腸ですから、乳酸菌よりもビフィズス菌の働きが大きく影響します。

腸内のビフィズス菌を活性化する方法

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ではどうすれば腸内のビフィズス菌を活性化できるのでしょうか? 一般的に推奨されているのは、ビフィズス菌を含むヨーグルトやサプリメントを摂る方法です。
しかし、食べ物から摂ったビフィズス菌が生きて大腸に届いたとしても、腸内にもともと生息している常在菌に勝つことができず、数時間から数日程度で便として排出されてしまいます。
もちろん大腸に留まる期間が短くても、殺菌力の強い酢酸を生成するため一定の整腸作用が期待できます。ですが新しい菌を送り込むだけでは腸内フローラを変えることは困難です。
そこで大腸にもともと生息しているビフィズス菌にエサを供給することで増殖を促しましょう。ビフィズス菌のエサとなる食物繊維とオリゴ糖を豊富に含む野菜や果物をたくさん摂ると効果的です。

全体の2割が善玉菌であれば大腸菌は増殖しない

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健康な成人の腸内では全体の約2割を善玉菌で占めていて、その95%以上はビフィズス菌です。乳酸菌も生息していますが数が少ないため影響力は大きくありません。
腸内で多数派を占めている日和見菌は、善玉菌と悪玉菌のどちらか優勢なほうに味方をする性質があります。
理想的な腸内フローラは『善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7』とされていますが、腸内環境を良好に保つために腸内フローラ全てを変える必要はありません。
ビフィズス菌の数を一定に保ち、善玉菌2割を維持できれば、日和見菌が悪玉菌に味方をすることはありません。このような善玉菌優勢の腸内環境であれば、大腸菌が増殖して暴れることはないのです。

腸管出血性大腸菌O-157の感染を予防する乳酸菌

ビフィズス菌の働き

ビフィズス菌には病原菌の感染を防ぐ働きがあることが分かっています。そこで理化学研究所の研究グループは、腸内細菌を持たない無菌マウスを使った実験でビフィズス菌がO-157の感染を予防するメカニズムを解明しました。

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・ビフィズス菌の試験結果
無菌マウスにO-157を経口投与すると7日程度で死亡します。ところが特定のビフィズス菌を予め投与してからO-157を投与すると、腸内で酢酸の量が増加し、O-157に感染しないことが確認されました。
またO-157によって作られるジカ毒素が血液中にほとんど流出しないことも確認されました。さらに大腸粘膜上皮の細胞を培養して、酢酸を直接作用させると、細胞はO-157に感染しても死亡しにくいことも分かりました。
これは、ビフィズス菌が生成する酢酸が、腸管上皮に作用することで大腸粘膜上皮が保護することを示していて、それによってビフィズス菌がO-157の感染を防ぐと考えられています。

・全てのビフィズス菌に効果があるわけではない
ただしビフィズス菌にはさまざまな種類があり、全ての菌がO-157の感染を予防できるわけではありません。これまでにBB536株、ビフィズス菌SP株(SBT2928株)などにO-157の感染を防ぐ効果があることが分かっています。

乳酸菌の働き

O-157の感染を予防する効果はビフィズス菌だけでなく一部の乳酸菌でも認められています。その一つがカゼイ・シロタ株です。
後のヤクルト創業者である代田稔博士はチフスや赤痢などの感染症で命を落とす子どもを助けようと乳酸菌の研究を行っていました。
胃酸や胆汁酸に強い乳酸菌として選び出し、1930年に強化培養に成功したのがシロタ株です。このような経緯で発見されたシロタ株には優れた感染症予防効果が期待されています。

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・シロタ株の試験結果
健康な成人10名を対象にした試験では、シロタ株を100億個以上含む飲料を4週間摂ってもらい、腸内フローラを調べました。
その結果、腸内のビフィズス菌が3倍に増加して、大腸菌が1/5に減少することが確認されました。
さらに動物を使った実験では、シロタ株を投与することで腸管に定着したO-157の菌数が1/100に減少することが確認されています。

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