乳酸菌の種類
350種類以上ある乳酸菌
腸内環境を整えてくれる乳酸菌は、特定の種類の菌を指すのではなく、ブドウ糖や乳糖などの糖を分解して乳酸を生成する微生物の総称です。
乳酸菌の種類はさまざまで、有名なところではブルガリア菌、カゼイ菌、ガセリ菌、アシドフィルス菌、ビフィズス菌などがあります。
これまでに350種類以上見つかっていますが、同じ乳酸菌であっても豊富な菌株を持つものも多く、これらを含めるとその数は数千にのぼります。
乳酸菌はこのように名前がつけられる
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乳酸菌は、学名上は大きなカテゴリーから菌属、菌種、菌株の順番に名前がつけられています。人間の世界では菌属は苗字にあたり、菌種は下の名前にあたります。
例えば、乳酸菌飲料でおなじみのシロタ株の正式名称は『ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株』、ラクチバチルスは菌属、カゼイは菌種、シロタ株は菌株です。
ヨーグルトに使われる代表的な乳酸菌であるブルガリア菌の正式名称は、『ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリクス』、ラクトバチルスが菌属、デルブルッキー亜種ブルガリクスが菌種です。亜種とつくのは遺伝的には同一の菌種ですが、性質が多少異なる菌が存在するときに使われます。ちょっと難しいですがこの法則を知っておくと、乳酸菌の種類を覚えて区別するときに役立ちます。菌属と菌種が同じであればおおまかな特徴が共通しているため、乳酸菌の種類を区別することができます。
とはいえ菌株も重要です。菌属と菌種で表記される学名は人間では姓名ですが、同姓同名の人が居るように同じ菌種であってもそれぞれ特徴が微妙に異なるため、菌株で区別しています。
例えばヨーグルト作りにはブルガリア菌2038株とサーモフィラス菌1131株を組み合わせて使うのがポピュラーですが、これは特定の菌株を使うことで優れた風味と食感のヨーグルトが出来上がるからです。
乳酸菌の分類
菌の形態によって大きく三つに分けられる
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乳酸菌は菌の形態によって大きく分けて三つに分けられます。
(1)乳酸桿菌
棒状の形をしていて、酸素があってもなくても活動できますが比較的酸素の薄い場所を好む通性嫌気性菌で、人間の体内では主に小腸に生息しています。
また、牛乳などの動物の乳や、野菜や穀物を発酵させた食品からも多く見つかる菌です。乳酸桿菌は一般的にはラクトバチルス属を指すことがほとんどです。
乳酸桿菌に属する菌属
ラクトバチルスなど(2)乳酸球菌
丸い球状の形をしていて、比較的酸素の薄い場所を好む通性嫌気性菌です。このうちエンテロコッカス属は人間の回腸、盲腸、大腸に生息しています。
ラクトコッカス属とストレプトコッカス属は主に牛乳などの動物の乳に、ペディオコッカス属は味噌や醤油、ザワークラウトに、ロイコノストック属は大豆発酵食品に多く含まれています。
乳酸球菌には「○○コッカス」と名前がつく菌属が多くあります。コッカスとは球菌という意味です。【乳酸球菌に属する菌属】
ストレプトコッカス、ラクトコッカス、エンテロコッカス、ペディオコッカス、ロイコノストック、テトラジェノコッカスなど【ビフィズス菌】
V字型やY字型をしていて、酸素のない環境を好む偏性嫌気性菌のため、口から遠い大腸に生息しています。人間の腸内に生息する善玉菌の95%以上はビフィズス菌です。
乳酸の他に殺菌力の強い酢酸を大量に生成する性質があります。ビフィズス菌は乳酸菌とは異なる微生物として区別されることもありますが、性質に共通点が多いため一般的には乳酸菌の一種として扱われています。
さまざまな菌属を持つ乳酸球菌とは異なり、ビフィズス菌=ビフィドバクテリウム属です。
動物由来と植物由来
乳酸菌はもともと生息していた場所が動物の体内なのか、野菜や穀物由来なのかによって、動物性乳酸菌と植物性乳酸菌に分かれています。
乳酸菌と聞くとヨーグルトなどの乳製品をイメージしますが、実際には自然界のさまざまな場所に生息しています。
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動物性乳酸菌
牛乳などの動物の乳、人間や動物の腸や胃などの消化管、口腔内、母乳、膣内などに生息していた乳酸菌を動物性乳酸菌といいます。
主にヨーグルトやチーズ、なれずしなどを作り出す菌であり、私たちの腸内では善玉菌として働き、悪玉菌を抑制して腸内環境を保つ働きをしています。
動物性乳酸菌は栄養豊富な環境で生きてきたため、多くの菌は酸や熱に弱い性質を持ちます。ブルガリア菌など動物の乳に生息していた菌は、他の微生物が居ない環境で生きてきたため、人の腸など多くの微生物が暮らす環境では長く留まることができません。植物性乳酸菌
一方の植物性乳酸菌は、野菜や穀物などの植物の表面に生息している乳酸菌です。野菜や穀物を発酵させたキムチやぬか漬けなどの漬物、みそ、しょうゆ、みりん、清酒、ワインなどの発酵食品にも生息しています。
植物性乳酸菌は栄養に乏しく厳しい環境で生き抜いてきたため、強い生命力を持つのが特徴です。酸に強い性質を持ち他の微生物とも共存できるため、生きて腸まで届いて長く留まることができます。
代表的な乳酸菌の種類
ラクトバチルス属
ブルガリア菌2038株
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正式名称はラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリクス、ヨーグルトの本場であるブルガリアのヨーグルトに伝統的に使われている菌です。
ほとんどのヨーグルトに添加される種菌であり、サーモフィラス菌と組み合わせて使います。またこの菌とサーモフィラス菌1131株を組み合わせた菌をLB81乳酸菌と呼んでいます。
シロタ株
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正式名称はラクチバチルス・カゼイ・シロタ株、後にヤクルトの創業者となる代田稔博士が1930年に発見した乳酸菌です。
医療の普及が不十分で抗生物質もなかった20世紀初頭の日本では、多くの子どもたちがチフスなどの感染症で命を落としていました。
そんな子どもたちを助けようと、代田博士が自ら集めた乳酸菌の中から、胃酸や胆汁に強く、生きて腸まで届く菌として選び出し、強化培養に成功したのがシロタ株です。
ガセリ菌SP株
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正式名称はラクトバチルス・ガセリ・SBT2055株、健康な日本人の腸内に生息するヒト由来の乳酸菌として雪印メグミルクが発見しました。
ガセリ菌SP株は生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌であり、はじめて人の消化管に定着することが試験で証明された菌です。最大で90日と長く腸内に留まることができるのが特徴です。
LGG菌
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正式名称はラクトバチルス・ラムノーサス・GG株、1985年に発見され、これまでに30ヶ国以上で活用されている乳酸菌です。
その特徴は優れた耐酸性と耐胆汁性にあり、胃酸や胆汁酸に負けることなく生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌であり、腸内に長く留まることができるとされています。
またLGG菌は細胞の表面が小さな繊毛によって覆われていて、腸管に付着する力が強いことが分かっています。
R-1乳酸菌
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正式名称はラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリクス・OLL1073R-1株、ヨーグルトの種菌として使われるブルガリア菌の一種です。EPSと呼ばれる多糖成分を作り出すのが特徴です。
L-55株
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正式名称はラクトバチルス・アシドフィルス・L-55株、乳幼児の腸内から分離されたヒト由来の乳酸菌です。もともと人間の腸内に生息している乳酸菌であることから、他の動物性乳酸菌と比べて酸に強く、胃液や腸液に強い耐性を持つのが特徴です。
人工胃液を使った耐久試験では100%が生存し、人工腸液による耐久試験でも菌の減少がほぼ認められませんでした。
L-55株は生きて腸に届くプロバイオティクスの乳酸菌で、腸管上皮粘膜に付着することで長く留まることができます。
L-92株
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正式名称はラクトバチルス・アシドフィルス・L-92株、カルピスが保有する乳酸菌の中からアレルギー症状を抑制する効果が高い菌として選び出されました。
ラブレ菌
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正式名称はラクトバチルス・ブレビス・サブスピーシス・コアギュランス、1993年にルイ・バストゥール医学研究センターの岸田綱太郎博士によって発見されました。
京都の伝統的な漬物であるすぐき漬けから発見された植物性乳酸菌です。ラブレ菌はEPSと呼ばれる多糖のネバネバ成分を多量に分泌する性質があり、消化液に対して強い耐性を持つのが特徴です。
腸内での生残率は植物性乳酸菌の中でもトップクラスであり、生きて腸まで届いて長く活動することができる乳酸菌です。
ストレプトコッカス属
サーモフィラス菌1131株
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正式名称はストレプトコッカス・サーモフィラス・1131株、ブルガリア菌とともにヨーグルトの種菌として使われている乳酸菌です。この菌とブルガリア菌2038株を組み合わせた菌をLB81乳酸菌と呼んでいます。
ラクトコッカス属
クレモリスFC株
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正式名称はラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス・FC株、カスピ海ヨーグルトを作る乳酸菌として知られています。1986年、長寿研究を行っていた家森幸男博士がコーカサス地方のジョージアから持ち帰りました。
EPSと呼ばれる多糖の粘り成分を産生する性質があり、カスピ海ヨーグルトに独特の粘り気をもたらしています。さらにEPSによって菌体が消化液から守られることで、胃酸や胆汁酸で死滅することなく生きて腸まで届けることができると考えられています。
プラズマ乳酸菌
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正式名称はラクトコッカス・ラクティスJCM5805株、キリンと小岩井乳業の共同研究によって発見された乳酸菌です。プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)と呼ばれる免疫細胞を活性化する性質があります。
エンテロコッカス属
EC-12株
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正式名称はエンテロコッカス・フェカリス・EC-12株、球状をしたとても小さな乳酸菌です。殺菌しているため生きて腸まで届くことはありませんが、高密度に圧縮されているため1gに5兆個もの菌が含まれています。
FK-23株
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正式名称はエンテロコッカス・フェカリス・FK-23株、健康な人間の腸管に生息しているヒト由来の乳酸菌で1986年に発見されました。加熱処理して使われるため生きて腸に届くことはありませんが、優れた働きが認められていて多くの特許を取得しています。
テトラジェノコッカス属
Th221株
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正式名称はテトラジェノコッカス・ハロフィルス・Th221株、醤油の醸造過程で作られるもろみから分離された植物性乳酸菌です。KK221株と呼ばれることもあります。
Th221株は醤油作りにおいて味に深みを与えて香りを引き出すために重要な役割を果たしています。
ビフィドバクテリウム属
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正式名称はビフィドバクテリウム・ラクティス・Bb-12株、1985年から世界で利用されているビフィズス菌です。従来のビフィズス菌は酸に弱くpH4.0以下では生存できないため、生きて腸まで届けることが困難でした。
Bb-12株はpH2.0という空腹時の胃液に匹敵する強い酸性下でも生存することが可能です。そのため他のビフィズス菌よりも酸に遥かに強く、生きて腸まで届くプロバイオティクスのビフィズス菌です。
人工胃液を使った実験ではpH4.0で3時間漬けてもほぼ100%が生存し、pH2.0という空腹時の胃液に近い強酸性では1時間半で約7割の菌が耐えることができました。
BB536株
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正式名称はビフィドバクテリウム・ロンガム・BB536株、森永乳業が発見し1971年に世界で初めて食品に利用されたビフィズス菌です。
従来のビフィズス菌は酸や熱に弱い性質があり、ヨーグルトなどの乳製品への応用は困難とされてきました。
しかし、BB536株はこれまでのビフィズス菌とは異なり熱や酵素、酸に強いという性質を持つ菌として注目され、多くの食品へ応用されるようになりました。
生きて腸まで届くプロバイオティクスのビフィズス菌であり、大腸で殺菌力の強い酢酸を大量に生成するのが特徴です。
BE80株
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正式名称はビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス・BE80株、強い生命力を持つビフィズス菌です。
従来のヨーグルトは出荷直後から菌の数が減っていきますが、BE80株は賞味期限まで菌の数がほとんど減少せず、胃の中で生存する数も従来のヨーグルトよりも多いのが特徴です。
ビフィズス菌SP株
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正式名称はビフィドバクテリウム・ロンガム・SBT2928株、日本人の腸内に生息するビフィズス菌の中から特に優れた効果を持つ菌株を選び出しました。
ビフィズス菌SP株は食べ物から摂って生きて大腸に届いて定着することが証明されているビフィズス菌です。
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