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乳酸菌の効果はすぐに実感できる?

乳酸菌に即効性はない

すぐに効果を実感することはできない

乳酸菌はお腹の調子を整えてくれる善玉菌の代表です。ヨーグルトなどから気軽に摂ることができ、健康に良いことから多くの方が食生活に取り入れています。
そこで気になるのが乳酸菌を摂ってから効果が実感できるまでにかかる期間です。中には「すぐに効果が実感できるはず」と思い込んでいる方もいますが、それは違います。
乳酸菌を配合したヨーグルトなどの食品は薬ではないため即効性はありません。また医薬品としては生きた乳酸菌の菌体を乾燥させたものを配合した乳酸菌製剤があります。
こちらは薬のため人によってはすぐに効果が現れますが、多くの人が効果を実感するのは摂り始めて3日から1週間程度と言われています。
どちらにしても腸内環境は人によって異なるため、効果が実感できるまでは個人差があります。

腸内環境を変えるためには一定の時間が必要

乳酸菌には腸内にもともと生息していた善玉菌を活性化して増殖を促すことで、悪玉菌を抑制して腸内環境を改善する働きがあります。それによって便秘やお腹の張り、下痢などの不調が改善されます。
腸内環境を改善して、腸内フローラを変えるためには一定の時間が必要です。ほかにも菌体が小腸で吸収されて免疫細胞が刺激されることで、免疫力を高める効果が期待できます。
腸内環境が改善されることで得られる効果ですが、お腹の不調を改善するよりもさらに時間がかかります。乳酸菌によって腸を元気にするためには一定の期間取り続ける必要があります。

便秘の改善までには2週間程度必要

臨床試験から分かる便秘の改善に要する期間

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乳酸菌が持つ最も有名な効能と言えば整腸作用でしょう。特に便秘の改善については、これまでに数え切れないほどの臨床試験が行われており、ほとんど全ての乳酸菌で効果が認められています。
便秘の改善にどれくらいの期間が必要なのかについては、臨床試験で被験者が摂取した期間を見ることで概ね分かります。ほとんどの臨床試験では被験者に2週間以上継続的に摂ってもらっています。つまり便秘の改善には乳酸菌を最低2週間摂る必要があるということになります。

便秘の改善効果を調べる臨床試験

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そこでLB81乳酸菌とビフィズス菌BB536株の試験結果を紹介します。LB81乳酸菌は日本でほとんどのヨーグルトの種菌として使われているブルガリア菌2038株とサーモフィラス菌1131株を組み合わせた乳酸菌です。
BB536株は1971年に世界で初めて食品利用されたビフィズス菌です。こちらも有名な菌株であり、ヨーグルトを中心に多くの食品に配合されています。

【LB81乳酸菌の試験結果】
38歳~59歳の男性8名を対象に、LB81乳酸菌を含むヨーグルトを毎日500g摂ってもらう試験を行いました。2週間後に腸内フローラを調べたところ、悪玉菌が減少し善玉菌が増加したことが確認されました。
さらに試験終了後に行ったアンケートでは、8名全員がヨーグルトを食べている期間中は便性が良く排便回数が正常で体調が良いと回答しています。

ほかにも排便回数が週4回以下の18歳~21歳の女子学生106名を対象に、LB81乳酸菌を含むヨーグルトを100gまたは250g摂ってもらう試験が行われています。
この試験の期間は6週間であり、その結果は「排便回数」と「排便量」が増加し、便秘傾向の方ほど効果が高いことが認められました。さらに「便の形状」や「すっきり感」にも改善が見られました。

【BB536株の試験結果】
便秘傾向のある女性39名を対象に、BB536株を含むヨーグルトを1日100g摂ってもらう試験を行いました。
その結果、摂取2週間で腸内のビフィズス菌の割合と排便回数が増加し、悪玉菌が作り出す腐敗物質であるアンモニアの濃度が低下することが確認されました。

ほかにも排便回数が週3回以下の方30名を対象に、BB536株を含むヨーグルトを1日30gまたは100gを摂ってもらう試験では、摂取開始1週間後から効果が出始め、4週間後には有意な効果が確認されました。

免疫力の向上には3週間以上必要

免疫細胞を刺激する乳酸菌

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整腸作用とともに乳酸菌によって得られる大きな効果が免疫力の向上です。私たちの体内にはウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫細胞が備わっています。
免疫システムを動かしているのは免疫細胞ですがその約6割は小腸に集中しています。このような腸による免疫のことを「腸管免疫」と呼びます。

乳酸菌が胃を通過して小腸に到達すると、パイエル板と呼ばれる免疫細胞であるリンパ球の集まりに取り込まれます。
パイエル板の下では異物を捕らえる樹状細胞が待機しています。パイエル板を通過した乳酸菌が樹状細胞に捕らえられることで、抗体を作り出すヘルパーT細胞やB細胞に情報が送られて免疫反応が起こります。
このようにして免疫細胞が刺激されることで免疫力を向上すると考えられています。

免疫力の向上には時間が必要

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乳酸菌によって免疫細胞が刺激されて免疫力が向上するまでには、便秘の改善よりも長い期間が必要です。なぜならより多くの菌がパイエル板に取り込まれて、何度も免疫反応を起す必要があるからです。
免疫細胞が異物に対処するために繰り返し出動することで、免疫活性=ウイルスや細菌に対処する力が鍛えられます。
また抗体はすぐに作ることができません。異物の情報を受け取ったヘルパーT細胞がB細胞に指令を出して抗体が製造されるまでには、5~7日ほどの時間がかかると考えられています。
このようなことから乳酸菌の免疫賦活効果を調べる臨床試験の多くが3週間以上かけて行われています。つまり免疫力の向上には乳酸菌を3週間以上摂り続ける必要があるということになります。

免疫賦活作用を調べる臨床試験

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優れた免疫賦活作用が認められた乳酸菌として注目されているのがOLL1073R-1株です。一般的にはR-1乳酸菌という名前で知られています。
NK(ナチュラルキラー)細胞と呼ばれる、ウイルスに感染した細胞を殺菌し、がん細胞を融解して除去する働きを持つ免疫細胞を活性化する働きが特徴です。
このようなことからOLL1073R-1株には風邪の罹患リスクやインフルエンザの感染リスクを下げる効果が期待されています。

【OLL1073R-1の試験結果】
25~59歳の健康な男女62名を対象にインフルエンザワクチンの効果を調べる試験を行いました。
まず62名を二つのグループに分けて、一方にはインフルエンザワクチン接種の3週間前からOLL1073R-1株を含む飲むヨーグルトを1日112ml摂ってもらいました。
インフルエンザワクチン接種の前後には体内で作られた抗体の抗体価を調べました。その結果、インフルエンザA型H1N1、B型に対する抗体の抗体価が試験開始時の約6倍、ワクチン接種時の約5倍に上がることが確認されました。
これはOLL1073R-1を3週間摂ることでインフルエンザワクチンの効果を高める可能性があることを示しています。

アレルギー症状の緩和には長期間の摂取が必要

免疫バランスを整える乳酸菌

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花粉症や通年性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の原因は免疫システムの誤作動です。
免疫細胞が本来は無害である花粉などの物質を誤って異物と判断すると、ヘルパーT細胞がIgE抗体を大量に生成し自らの細胞を攻撃します。
一部の乳酸菌にはヘルパーT細胞に働きかけることで、免疫バランスを整えてIgE抗体が作られるのを抑制する働きが認められています。

症状の改善には数ヶ月が必要

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乳酸菌によって免疫バランスが整えられてIgE抗体の過剰な生成が収まるまでには長い期間が必要です。多くの臨床試験では被験者に数ヶ月単位で乳酸菌を摂ってもらい効果を調べています。

アレルギー症状の緩和効果を調べる臨床試験

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そこでアレルギー症状に対する有効性が認められているBB536株とL-92株の試験結果を紹介します。
アシドフィルス・L-92株はアレルギー症状を緩和する効果が高い菌株として選び出された乳酸菌です。
これまでに多くの臨床試験が行われ、花粉症、通年性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎といった代表的なアレルギー疾患の症状を改善することが認められています。

【L-92株の試験結果】
花粉症患者12名を対象に行った試験では、L-92株を含む食品を6週間摂ることで、症状が緩和されることが確認されています。
ほかにも通年性アレルギー性鼻炎患者25名を対象に行った試験では、L-92株を含む食品を8週間摂ることで、症状が緩和されることが確認されています。
18~54歳までのアトピー性皮膚炎患者24名を対象に行った試験では、通常の投薬治療と合わせてL-92株を含む食品を8週間摂ることで、症状が緩和されることが確認されています

【BB536株の試験結果】
花粉症患者を対象に、BB536株を含むヨーグルトを13週間食べ続けることで、症状が改善されたという報告があります。

まずは2週間摂ろう

大切なのは自分の腸との相性

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乳酸菌を摂って効果を実感するまでには、腸内環境や便秘の改善で2週間以上、免疫力の向上やアレルギー症状の改善にはそれよりも長い期間が必要です。
とはいえ個々の乳酸菌にどんなに優れた効能が認められていても、自分の腸内環境と合わなければ効果を実感することはできません。
腸内フローラは千差万別で一人として同じものはないと言われています。腸内に生息する細菌の種類は人によって異なるため、その乳酸菌が自分に合うかどうかは摂ってみないと分からないのです。

まず2週間摂って体調を観察しよう

そこで自分に適していると思われる乳酸菌をまず2週間摂ってみましょう。もし体調が思わしくないと感じた場合は摂取を中止してください。
明確な体調の変化が分からない場合は、お通じの状態などをチェックして自分の腸と合っているか判断してください。

毎日摂り続けることが重要

ここまでさまざまな臨床試験を紹介しましたが、どれも被験者は一定期間毎日のように乳酸菌を摂っています。乳酸菌はいつ効果が実感できるか以上に、毎日摂り続けることが重要です。
乳酸菌を摂り始めてちょっと体調が良くなったからと、短期間で摂るのを止めてしまうと、すぐに腸内環境が元に状態に戻ってしまいます。
特に免疫力の向上を期待するなら、常に乳酸菌を腸に送り込んで免疫細胞を刺激し続ける必要があります。

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