腸内の乳酸菌が活性化する食事とは
食事で腸内の乳酸菌やビフィズス菌を活性化できる
乳酸菌やビフィズス菌は腸の健康維持に欠かせない善玉菌です。腸内環境の悪化によってお通じの乱れや便秘を防ぐためには、腸内にもともと生息している乳酸菌やビフィズス菌を活性化する必要があります。
ところが偏った食生活を送っていると、乳酸菌やビフィズス菌が腸内で十分に働くことができなくなってしまいます。
その理由は、乳酸菌やビフィズス菌が活動するためには餌が必要だからです。ですから食事の摂り方を工夫することで餌を供給して、乳酸菌やビフィズス菌が腸内で活発に活動できる下地を作る必要があります。
もちろん偏った食生活によって悪玉菌の増殖を引き起こしてしまっては、いくら乳酸菌やビフィズス菌を摂っても悪玉菌によって働きが抑制されてしまうため、思うような効果が期待できません。
腸内で乳酸菌やビフィズス菌が活躍できるかどうかは、毎日の食生活によって決まるといっても過言ではないのです。
悪玉菌の増殖を引き起こす食生活とは
腸内の乳酸菌やビフィズス菌に良い食生活について理解するためには、どのような食生活をしていると悪玉菌が増殖するのかを知る必要があります。
なぜなら、腸内環境に悪影響を与える食事の摂り方を避けることで、悪玉菌が増殖するのを防ぎ、善玉菌を活性化することが可能になるからです。
では、悪玉菌の増殖を引き起こすのはどのような食生活なのでしょうか?
日本で腸内細菌研究の第一人者である東京大学の光岡知足名誉教授は、肉食に偏った食生活に警鐘を鳴らし「特に赤身の肉が悪玉菌による腐敗を招く」と言います。
肉類に含まれる動物性たんぱく質や脂質は、悪玉菌の大好物だからです。日本では昭和の中頃からいわゆる食事の欧米化が進み、肉類の摂取量が右肩上がりに増えています。
しかし、肉類を摂り過ぎると小腸で分解、消化しきれなかったらたんぱく質や脂質が大腸に送られることで、悪玉菌のエサとなり増殖を引き起こしてしまいます。
また、牛肉などに含まれる血の多い赤身肉には、たんぱく質であるミオシンが含まれていますが、このミオシンは悪玉菌が特に好むエサです。ですから肉類を食べる場合は牛肉の赤身肉を控えて、豚肉や鶏肉を中心にすると良いでしょう。
もちろん、肉類は血液や筋肉を作るために必要であり、食べてはいけないわけではありません。ですが腸内環境を考えるなら、肉類を食べる頻度を週に1~2回程度に抑えたいところです。
腸内の乳酸菌が活性化する食事とは
発酵食品を積極的に摂ろう
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腸内の乳酸菌やビフィズス菌を活性化するために積極的に摂りたいのが発酵食品です。乳酸菌と聞くとどうしてもヨーグルトをイメージしがちですが、日本人が伝統的に摂ってきた味噌や醤油、漬物、甘酒などにも乳酸菌が含まれています。
さらに発酵食品大国である日本には乳酸菌以外にも、納豆、酢、みりん、清酒など麹菌や酵母菌などで作られた発酵食品が豊富にあります。納豆は藁の稲に生息している納豆菌によって発酵させていますが、乳酸菌を増やす働きがあり、同時に摂ることで相乗効果が期待できます。これらの発酵食品を活用しない手はありません。長寿で知られる国や地域の人々は、必ずと言っていいほど発酵食品を日常的に食べています。例えば、近年では長寿全国1位になるほど長寿県として知られている長野県には、野沢菜漬けやすんき漬けなどの発酵食品があります。
海外でもこの傾向は変わりません。カスピ海ヨーグルトで知られる東ヨーロッパのコーカサス地方には100歳以上のお年寄りが多いと言われています。
「ヨーグルト不老長寿説」で知られるロシアの微生物学者イリヤ・メチニコフは、ブルガリアに長寿者が多い理由をヨーグルトに求めました。
日本人の食生活は近年では欧米化が進んでいるとはいえ、それでも世界では長寿国として知られています。これは摂取量が減少傾向にあるとはいえ、日本人が日常的に食べている発酵食品が腸内環境に良い影響を与えていると考えて良いでしょう。
塩分が気になるという方もいますが、発酵食品は微生物によって雑菌の繁殖を防ぐことができるため、使用する塩の量を減らすことができます。ご飯と味噌汁を中心とした和食を摂っている限りはそれほど気にする必要はありません。
ヨーグルトを摂ろう
ヨーグルトを毎日食べると効果的
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もちろん、腸内の乳酸菌やビフィズス菌を活性化させるためには、ヨーグルトも有効です。とはいえ、ただヨーグルトを摂れば良いというわけではありません。
一時的に体調が良くなったからといってすぐに摂るのを止めてしまうと、腸内環境が元の状態に戻ってしまいます。大切なことはヨーグルトを毎日摂ることです。
その理由は、ヨーグルトに含まれる動物性乳酸菌は生命力が弱いため、生きて腸まで届いたとしても、長く留まることができないからです。その多くは数時間から数日程度で便として排出されてしまいます。
そもそも乳酸菌をヨーグルトなどから摂っても、腸内にもともと生息している常在菌に勝つことができないため、活動できる期間には限りがあります。ですから毎日のようにヨーグルトを摂ることで常に腸を刺激する必要があります。
出来るだけたくさんの菌を摂ろう
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ヨーグルトを食べる量も重要で、十分な効果を期待するなら出来るだけたくさん食べる必要があります。なぜならヨーグルトにはそれほど多くの菌が含まれていないからです。
市販のヨーグルトには1mlあたり1000万個以上の乳酸菌が含まれていますが、これは乳等省令という法律で定められています。100mlでは10億個になります。乳酸菌についてよく知らない方は「これだけ摂れば十分では」と思われるかもしれません。
しかし、私たちの腸内には100兆~1000兆個もの細菌が生息しているのです。そこに数十億個程度の乳酸菌が新たに加わったところで、腸内細菌のバランスを変えることはできません。
スーパーやコンビニで市販されているヨーグルトは、内容量が多いものでも1個400g程度です。中には100gに満たない小さなカップのものもあり、この程度の量を食べても十分な数の菌を摂ることはできません。
1日にどれくらいのヨーグルトを食べたら良いのかについては明確な答えはありませんが、イリヤ・メチニコフは1日300~500g食べることを推奨しています。また、光岡氏は毎日250~350gのヨーグルトを摂っているそうです。
「とてもこれだけの量は食べられない」という方は、ヨーグルトだけに頼るのではなく他の発酵食品と併用することで、十分な数の菌を腸に送り届けましょう。
無糖で低脂肪のヨーグルトが良い
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ヨーグルトをたくさん食べると気になるのが栄養の偏りです。ヨーグルトにはビタミンやカルシウムなど体に良い栄養素が豊富に含まれていますが、脂質や糖質も多く含まれています。
特に牛乳を原料としているヨーグルトには、約3%の脂肪分が含まれています。少なく感じるかもしれませんが、200mlのヨーグルトを食べると6gになり、これではさすがに摂りすぎです。
一方の糖質は、ヨーグルトを製造しているメーカーが、万人受けする味にするために砂糖を添加しています。デザートとして少しだけ食べる場合は問題ありませんが、たくさん食べる場合は糖質を摂りすぎてしまいます。
いくらヨーグルトに含まれている乳酸菌が腸の健康に良くても、糖質を摂り過ぎると高血糖になり糖尿病などのリスクを高めてしまいます。脂質の摂りすぎは肥満や高脂血症に繋がります。
そこでおすすめなのが無糖で低脂肪のヨーグルトです。無糖のヨーグルトは昔からありましたが、低脂肪ヨーグルトは近年の健康志向の高まりにより少しずつ充実してきました。甘さがないと物足りなく感じる方は、低カロリー甘味料や果物を加えましょう。
食物繊維をたくさん摂ろう
野菜や果物から食物繊維をたくさん摂ろう
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食物繊維は難消化性のため、胃や小腸でほとんど消化されずに大腸に送られます。そのため、乳酸菌やビフィズス菌など善玉菌のエサとなり活性化させ、増殖を促すことができます。
食物繊維は、性質によって不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。
不溶性食物繊維は全く消化されずに大腸に届き便の嵩を増すことで、悪玉菌が生成した腐敗物質を排出してくれます。
ゴボウ、サツマイモ、レタス、大豆、インゲン豆、切り干し大根、納豆、ライ麦パンなどに多く含まれています。一方、水溶性食物繊維は水に溶けるとゲル状になる性質があり、栄養の吸収を穏やかにする働きがあります。昆布やワカメなどの海藻類、ゴボウ、切り干し大根、プルーン、いちじくなどに多く含まれています。
どちらの食物繊維も野菜や果物、豆類、海藻類などを多く摂る食生活を送っていれば、十分な量を乳酸菌やビフィズス菌のエサとして供給することができます。
食物繊維と腸内フローラの関係
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食物繊維と腸内フローラの関係について調べる研究も行われています。典型的な欧米食を摂っているカナダ人8名と宮城県の農村に住む日本人9人の腸内フローラを比較したところ、カナダ人のほうが検出されたビフィズス菌の数が少なく、検出率も低いことが分かりました。
さらに長寿地域として知られる山梨県棡原地区の長寿者の腸内フローラを調べたところ、ビフィズス菌の割合が一般的な人よりも多く、悪玉菌であるウェルシュ菌が少ないことが認められました。
また、この地区の高齢者は1日あたりに平均28.8gもの食物繊維を摂っていました。この量は、国が設定した目標値である男性は20g以上、女性は18g以上よりも多くの量を摂っていることになります。
精製した小麦粉や白米はほとんど善玉菌のエサにならない
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食物繊維を摂るうえで気をつける点があります。それは米や小麦などの穀物の摂り方です。これらにも本来は多くの食物繊維が含まれています。
ところが米は、玄米を精米して白米にする過程で、食物繊維を含むぬか層や胚芽がほとんど取り除かれてしまいます。小麦は製粉して小麦粉にすることで、食物繊維を豊富に含む表皮や胚芽が取り除かれてしまいます。
そのため白米を炊いたご飯、小麦粉から作られたパンやケーキ、麺類、お菓子などを摂っても、ほとんど乳酸菌やビフィズス菌のエサになりません。
ご飯やパンは消化に良く素早くエネルギーに変えられるというメリットがありますが、栄養素が腸ですぐに吸収されてしまうため、腸内環境にとってはプラスに働かないのです。
日本人が摂取する食物繊維の量は1950年代から減少傾向が続いていますが、野菜や果物の摂取不足に加えて、精米技術の進歩も少なからず影響しています。
もちろん白米で炊いたご飯、小麦粉から作られたパンや麺類を食べていけないわけではありません。その分、野菜や果物をたくさん摂ることで食物繊維の不足をカバーすれば良いのです。
全粒粉や分づき米がおすすめ
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そこで近年見直されているのが小麦の表皮や胚芽を取り除かず、全てを粉にした全粒粉です。食物繊維が薄力粉の3倍程度含まれています。全粒粉を使ったパンやお菓子、麺類はおいしくて香ばしさがあり、体にも良いと人気が出ています。
米は、籾を取り除いただけの玄米が最も多くの食物繊維を含んでいます。とはいえ硬くてボソボソしているため食べづらいと感じる方も多くいます。
そこでおすすめなのが、精米方法によって糠や胚芽を一部残した分づき米です。その中でも5割以下の精米率に抑えた3分づきや5分づきは、胚芽はそのまま、糠層は大半が残っています。やや玄米に近い食感はありますが、食べやすくて風味があり、食物繊維をたくさん摂ることができます。
オリゴ糖を摂ろう
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食物繊維と同じようにオリゴ糖も難消化性の性質を持つため、胃や小腸でほとんど吸収されずに大腸に送られます。そのためビフィズス菌のエサとなり活性化し、増殖を促すことができます。
オリゴ糖は糖類ですから甘味があります。しかし、小腸でほとんど吸収されないため砂糖とは違い高血糖になることがありません。腸内環境に良く、体にも優しいオリゴ糖を積極的に摂りましょう。
オリゴ糖は野菜や果物など身近な食品にも含まれています。バナナやリンゴ、玉ねぎには比較的多く含まれていますが、食品にはあまり多くのオリゴ糖が含まれていません。
効率的に摂りたい方はオリゴ糖から作られた甘味料を活用しましょう。ヨーグルトにオリゴ糖甘味料を加えるのも効果的です。
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