ラクトコッカス属の特徴
ラクトコッカス属とは
乳酸菌は大きく分けて乳酸桿菌、乳酸球菌、ビフィズス菌に分類されます。ラクトコッカス属はその中で乳酸球菌に属しています。ラクトは乳、コッカスは球を意味しています。
乳酸菌は「菌属」「菌種」「菌株」に分類され、この3つの組み合わせによって学名がつけられています。例えばクレモリスFC株の場合は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス・FC株となります。サブスピーシーズは亜種を意味しています。
つまりラクトコッカスという乳酸菌が存在するわけではなく、ラクトコッカス属という大きなカテゴリーがあり、その中にたくさんの菌種菌株が存在しているのです。
ラクトが乳を意味する通り、ラクトコッカス属に含まれる乳酸菌は全て動物由来の動物性乳酸菌で、牛乳から見つかった菌が多いのが特徴です。代表的な菌種としてはラクティスとラクティス亜種があります。
ラクトコッカス属の特徴
形状と性質
ラクトコッカス属の乳酸菌はやや楕円の球状をしています。乳酸菌はブドウ糖100に対して50以上の乳酸を生成する微生物の総称です。ラクトコッカスはその中でも糖から生成する物質がほぼ全て乳酸である「ホモ発酵型」に分類されます。
酸性の環境でもアルカリ性の環境でも生きることができ、塩分濃度の変動にも強いことから、自然界に多く存在しています。
食品への応用
ラクトコッカス属の乳酸菌は、主に乳製品の発酵に使われています。カスピ海ヨーグルトなどはっ酵乳の種菌としても使われるほか、チーズや発酵バター作りに欠かせない菌として重宝されています。
『ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス』と『ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス』は、カマンベールやゴーダ、チェダーなどのチーズやサワークリーム、バターなどの乳製品作りに応用されています。
特にチーズ作りにおいては種菌として欠かせない乳酸菌です。ラクトコッカス・ラクティスが原料の乳に含まれる乳糖を分解して乳酸を生成し、それによってpHを低下させ、雑菌の繁殖を防ぎます。
さらにチーズの熟成過程で、乳成分を分解してチーズに独特の風味とコクをもたらす重要な役目を担っています。
ラクトコッカス属の歴史
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ラクトコッカス属の乳酸菌は、1873年にイギリスの研究者リスターが酸乳から発見しました。この菌は当初はバクテリウム・ラクティスと命名されました。
この投じはラクトコッカスという菌属が存在しなかったのです。その後、ストレプトコッカスに分類されます。
そして1985年にストレプトコッカスから独立して、新たにラクトコッカス属が設けられラクトコッカス・ラクティスと命名されました。
ラクトコッカス属の主な乳酸菌
クレモリスFC株
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1986年に家森幸男博士が東ヨーロッパのジョージアから持ち帰った菌株です。カスピ海ヨーグルトを作る乳酸菌として知られ、独特の粘り気となめらかな食感をもたらしています。
クレモリスFC株はEPSと呼ばれる多糖のネバネバ成分を産生するのが特徴です。このEPSによって菌体が守られることで、消化液で分解されることなく生きて腸まで届くと考えられています。
またこれまでの研究では、このEPSには血糖値の抑制や免疫力を高める作用があることが分かっています。他にもアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状の緩和、肌荒れの改善、コレステロール値の低下、大腸炎の緩和などさまざまな効果が認められています。
プラズマ乳酸菌
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キリンと小岩井乳業の共同研究によって発見された乳酸菌です。免疫細胞の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化する働きがあります。
その影響で、免疫物質である抗体やサイトカインを生成するヘルパーT細胞とB細胞が活性化されます。さらに体内をパトロールしてウイルスに感染した細胞を殺菌し、腫瘍細胞を除去して融解するNK(ナチュラルキラー)細胞も活性化されます。
このように免疫細胞全体が活性化することで、ウイルスに対する防御力が高まるとされています。これまでの研究では風邪やインフルエンザなどの感染症の感染リスクを下げ、症状を緩和する効果が認められています。
クレモリスCHCC2907株
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クレモリスFC株と同じくカスピ海ヨーグルトを作る乳酸菌です。多糖のEPSを生成します。
カスピ海ヨーグルトに独特の粘りとねっとり感をもたらすほか、サーモフィラス菌と組み合わせることでチーズ臭さのないヨーグルトが出来上がるとされています。
T-21株
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1990年にクランベリーから発見された植物性乳酸菌です。リフレクト乳酸菌と呼ばれています。T-21株は免疫物質であるサイトカインの一種インターロイキン-12の産生を促す働きが強い乳酸菌です。
インターロイキン-12はB細胞や樹状細胞から分泌され、NK細胞を活性化するほか、ヘルパーT細胞に働きかけて免疫バランスを調整します。
ほかにもアレルギー症状を抑制するインターフェロン-γの産生量を増やす働きがあることが分かっています。これまでの研究では花粉症と通年性アレルギー性鼻炎の症状を緩和する効果があることが確認されています。
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