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アトピー改善に乳酸菌

アトピー性皮膚炎の原因

日本人の2人に1人は何らかのアレルギー症状を抱えていると言われています。アトピー性皮膚炎もアレルギー症状の一つです。
昔は子どもが発症する症状と思われていましたが、最近では大人の間でもアトピーを発症する方が増えています。
アトピーは痒みのある湿疹が特徴で、赤みやブツブツが出たり、肌がジクジク状態になったりしますが、その原因は完全には解明されていません。
しかし、遺伝によるアトピー素因の保持や、皮膚のバリア機能低下などの体質的要因と、皮膚への外的刺激、疲労やストレスなどの環境的要因が影響していると考えられています。

アトピーと腸内環境の関係

アトピー性皮膚炎を発症している人は、腸内の善玉菌が少ないことがこれまでの研究で分かっています。

腸内環境の悪化が症状を悪化させる

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私たちの腸には100兆個以上の腸内細菌が生息しています。
これらは乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、大腸菌などの悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見菌に分かれ、それぞれお互いにバランスを取りながら腸内環境を維持しています。
しかし、不規則な生活や食生活の乱れ、疲労やストレスによって腸内の善玉菌の働きが弱くなると、悪玉菌が増殖して腸内環境が悪化してしまいます。
悪玉菌は食べ物を腐敗させて腸内に溜め込むことで便秘を引き起こします。さらに腸内の腐敗が進むと硫化水素やアンモニアなどの毒素が作られますが、これらの毒素は腸壁から吸収されて血流に乗って皮膚まで到達します。そうすると肌のターンオーバーが上手くできなくなります。どちらの症状もアトピーを悪化させるため、症状を緩和するためには腸内環境の改善が必要です。

腸内環境の悪化は免疫系にも悪影響を与える

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またアトピーは免疫バランスの乱れが関係していますが、免疫細胞の約7割は腸に集中していて、これを腸管免疫と呼びます。腸内環境の悪化は免疫系にも悪影響を与え、症状を悪化させてしまいます。

アトピーの症状を緩和する乳酸菌

乳酸菌やビフィズス菌には腸内環境を整える作用があり、アトピー症状の緩和に効果的と言われています。

私たちの体には病原菌やウイルスから身を守るために免疫システムが備わっていて、抗体を作り出すことで身を守っています。
しかし、何らかの原因で免疫システムに異常が発生すると、本来は体に入っても害のない食物や花粉といった物質まで異物と判断し、過剰に反応してアレルギー症状を引き起こしてしまいます。

異物は体内をパトロールするマクロファージなどの免疫部隊によって発見され、その情報は免疫をコントロールするヘルパーT細胞に伝えられます。
ヘルパーT細胞にはマクロファージなどの細胞性免疫を担当するTh1と抗体を作り出すTh2があります。この二つのバランスが正常に保たれていれば何も問題はありません。
しかし、Th2が優位になるとIgE抗体が大量に作られ免疫が過剰反応してしまいます。

悪玉菌が多い腸はTh2が優位になりやすいことが分かっています。
乳酸菌やビフィズス菌には悪玉菌を抑制するだけでなく、腸管免疫に働きかける作用もあり、免疫バランスの改善に繋がります。

子どものアトピー発症リスクを下げる乳酸菌

アトピー性皮膚炎は両親のアレルギー体質が遺伝する確率が高いとされていますが、フィンランドで行われた試験では、母親が乳酸菌を摂ることで子どものアトピー発症率が低下することが分かっています。
試験ではアトピーの家族歴がある妊婦を対象に、出産1ヶ月前から出産の6ヶ月後まで乳酸菌を継続的に摂ってもらいました。
その結果、乳酸菌を摂った人は摂っていない人と比べて子どものアトピー発症率が半減したうえに、その効果は7年続くことが認められました。
さらにアトピー症状を持つ子どもに乳酸菌を8週間摂らせたところ、痒みなどの症状に改善傾向が見られることも認められました。

アトピーの改善効果が認められた乳酸菌の種類

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・L-92乳酸菌
カルピスが保有する数多くの乳酸菌の中から、特にアレルギー症状を引き起こすIgE抗体を抑制する作用のあるものを選び出したのがL-92乳酸菌です。
生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌ですが、加熱殺菌処理してもアレルギーに対する効果は失われないのも特徴です。

18~54歳までのアトピー患者49名を対象に行った試験では、二つのグループに分けて、そのうち24名にL-92乳酸菌入り食品を、投薬治療を継続しながら8週間摂ってもらいました。
その結果、L-92乳酸菌を摂ったグループでは皮膚症スコアが大幅に改善され、アレルギー性の炎症とともに増加する血液中の好酸球数も、L-92乳酸菌を摂らないグループの半分以下に低下することが確認されました。

小児のアトピーに対する有効性も認められています。4~15歳までのアトピー患者20名を対象に行った試験では、L-92乳酸菌を8週間摂ってもらいました。
その結果、L-92乳酸菌を摂ると重症度スコアが下がり、痒みなどの皮膚症状も改善されることが確認されました。
さらに試験中のステロイド軟膏の使用量も減り、アンケートでは90%の被験者が「有効と感じた」と回答しました。

L-92乳酸菌は長期の摂取で効果があることが分かっています。16~49歳のアトピー患者50名を対象に行った試験では、二つのグループに分けて、そのうち24名にL-92乳酸菌入り食品を、投薬治療を継続したまま24週間摂ってもらいました。
その結果、L-92乳酸菌を摂ったグループでは、摂っていないグループと比べて、皮膚炎スコアが改善し、皮膚症状と痒みなどの自覚症状も改善されることが確認されました。
このことからL-92乳酸菌を摂ることで、痒みなどの自覚症状が緩和されて、その後、皮膚症状などが緩和することが推定できます。

・クレモリス菌FC株
カスピ海ヨーグルトに使われている乳酸菌として知られているクレモリス菌FC株は、生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌であり、EPSという独特の粘り成分を産生するのが特徴です。
クレモリス菌FC株はマウスを使った試験でアトピー性皮膚炎を改善する効果が確認されています。試験ではアトピーを発症させたマウスに、クレモリス菌FC株で発酵させたカスピ海ヨーグルトを投与しました。
その結果、カスピ海ヨーグルトを摂ることで皮膚の炎症や水分量の低下が抑えられることが確認され、アトピーの症状が緩和することが分かりました。

・LGG菌
1985年にアメリカで発見されて以来、世界30ヶ国以上で活用されているLGG菌は、世界で最も研究が進んでいる乳酸菌の一つです。酸に強い特性を持ち胃酸や胆汁に負けることなく生きて腸まで届きます。
さらにLGG菌特有の性質として、菌の表面に綿毛を持ち、腸への付着性を高めていることが分かっています。LGG菌は抗アレルギー作用があり、子どものアトピー発症リスクを下げる作用があることが認められています。

・KW3110株
キリンが保有する100種類以上の乳酸菌の中から、免疫バランスを整える効果を持つ菌として選び出されたのがKW3110株です。
酸に強く生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌です。アレルギー症状への有効性としては、ヘルパーT細胞のTh1とTh2のバランスの乱れを改善する作用を持つことが認められています。

アトピーについてはマウスを使った試験でその効果が確認されています。試験ではアトピーを発症させたマウスに1日当たり10mgのKW3110株を摂らせました。
その結果、普通の飼料を与えたマウスが皮膚のただれや出血が見られるのに対して、KW3110株を摂らせたマウスは症状がほとんど進行せず、臨床スコアも良好であることが確認されました。
また血中のIgE量も大幅に下がり、Th1とTh2のバランスが改善されることも分かりました。

・K-2株
酒粕から発見された植物性乳酸菌で、アレルギー症状を緩和する効果が高い菌として選び出されました。K-2株にはアトピー性皮膚炎を緩和する作用があることが、マウスを使った試験と人への試験で認められています。

軽症から中等症のアトピー患者33名を対象に行った試験では、K-2株を200mg(2000億個)摂ってもらい、皮膚症状を医師と被験者本人に評価してもらいました。
その結果、医師の評価ではスコアに改善傾向が見られ、本人による評価では発症箇所が少なくなりました。このことからK-2株を毎日200mg摂ることでアトピーの症状が緩和されることが分かりました。

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