乳酸菌でぜん動運動を促進
ぜん動運動とは
私たちが食事で摂った食べ物は、胃で消化された後に、小腸に送られて栄養が吸収され、その後大腸で便となり肛門から排出されます。この流れの中で、消化管を移動するときに発生する動きがぜん動運動です。
ここでは腸のぜん動運動について説明します。
私たちの腸では食べ物が胃から運ばれてくると、腸壁の筋肉が伸び縮みするぜん動運動が発生します。苦痛を伴うことなく便が腸から肛門へと運ばれて排泄できるのはぜん動運動のおかげです。便意を催したときに「お腹が鳴る」ことがありますが、これは腸のぜん動運動によって排泄が促されている証拠です。
もしぜん動運動が働かないと、腸で作られた便を上手く肛門に送ることができなくなり、腹痛が伴い力んでも力んでもなかなか便が出てこなくなります。自然なぜん動運動が起こるということはスムーズな排泄を行ううえでとても重要なことなのです。
ぜん動運動の停滞は便秘やお腹のハリを引き起こす
便秘やお腹のハリが起こる仕組み
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腸の働きが弱いとぜん動運動が停滞し、腹痛を伴う便秘が引き起こされ便性に異常が現れます。また老廃物である便が大腸に長い時間留まることで、便の水分が大腸に吸収されて固くなりますが、これがいわゆる宿便です。
腸内に生息する悪玉菌はこれらの宿便に含まれるタンパク質や脂質をエサにして増殖し、腸内を腐敗させてアンモニアや硫化水素といった毒素を作り出します。このような毒素がガスとして腸に溜まることでお腹のハリが引き起こされます。
お腹にガスが溜まって張った状態は「ぽっこりお腹」とも呼ばれ、慢性化すると不快なうえに腹痛や食欲不振を伴う辛い症状です。悪玉菌によって作り出された毒素は大腸がんなどの原因にもなります。
さらに毒素が腸壁に吸収されると血流に乗って全身へと行き渡り、肌荒れや体調不良を引き起こしてしまいます。
ぜん動運動を促すには善玉菌を増やす必要がある
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つまりぜん動運動が停滞した状態は便秘を引き起こし、それによって悪玉菌が増殖しやすい環境が作られ、腸内が腐敗して毒素が溜まっていくのです。
便秘になると下剤や整腸剤に頼りがちですが、腸内環境を改善せずに薬によって無理やり便を出していると、ぜん動運動は停滞したままとなり、余計に薬に頼らないと便を出すことができなくなります。ぜん動運動を促して便秘を解消するためには、腸内に住む善玉菌の増殖を促して腸内環境を改善し、腸の働きを活性化する必要があります。
乳酸菌にはぜん動運動を促す作用がある
ぜん動運動をコントロールするのは自律神経
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ぜん動運動は腸自身がコントロールしているのではなく自律神経によって動いています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、緊張やストレスを感じたり興奮状態にあると交感神経が優位となり、ぜん動運動を停滞させて便秘を引き起こします。
逆にリラックスした状態では副交感神経が優位となり、ぜん動運動が活発になります。
腸と脳は自律神経で繋がっている
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そこで重要になるのが腸内環境です。なぜ腸内環境と自律神経が関係しているのかと疑問に思われる方もいるでしょうが、腸は自律神経を通して脳と繋がっています。
自律神経は脳からの指令を受けて働いていますから、脳が緊張やストレスを過敏に感じていると交感神経に指令が送られてぜん動運動が弱くなってしまいます。ということは腸内環境を整えることで自律神経を通して脳に働きかけることも出来るということでもあり、これを「脳腸相関」と言います。
腸内細菌もぜん動運動に影響する
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とはいえぜん動運動は自律神経だけで発生させているわけではなく、腸内細菌も大きく影響しています。腸内では善玉菌と悪玉菌が常に勢力争いをしていて、善玉菌はぜん動運動を促しますが、悪玉菌は停滞させてしまいます。
腸内環境を改善するために摂りたいのが乳酸菌です。生きて腸に届いた乳酸菌は糖を分解して乳酸や酢酸を作り出します。これによって腸内環境が善玉菌の活動に適した弱酸性に変わると、腸内にもとから住んでいた善玉菌の増殖が促され、悪玉菌は抑制されます。
また乳酸や酢酸そのものも腸を刺激してくれるため、ぜん動運動を促す作用があります。
腸内環境の改善が自律神経を通じてぜん動運動を促す
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乳酸菌によって腸の働きが活性化されると便が大腸に溜まりにくくなり、自律神経を通して脳にも働きかけることで、副交感神経が優位になりぜん動運動が促されます。
ほかにも幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンという物質が分泌されると、イライラや不安が軽減されてリラックス状態となり副交感神経が優位になります。セトロニンの95%は腸によって作られていますから、乳酸菌によって腸内環境が整えられるとセロトニンの分泌も促され、結果的にぜん動運動が活発になります。
ビフィズス菌で大腸を活性化
ぜん動運動を活性化させるにはビフィズス菌が有効
乳酸菌は大きく分けて乳酸球菌と乳酸桿菌、ビフィズス菌に分かれています。乳酸球菌と乳酸桿菌は酸素があってもなくても活動できる通性嫌気性菌ですから、主に酸素の多い小腸に生息しています。
一方、ビフィズス菌は酸素がある環境を嫌う嫌気性菌であるため、口から遠く酸素が薄い大腸に生息しています。
便が作られるのは大腸ですから、ぜん動運動を活性化するためには大腸に働きかける必要があります。
また、大腸に住む善玉菌の99%はビフィズス菌のため、大腸にもともと住んでいたビフィズス菌を活性化させる意味でも、生きて大腸まで届くビフィズス菌を積極的に摂りたいところです。
生きて腸まで届くビフィズス菌の種類
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ところがビフィズス菌の多くは酸に弱い性質を持つため、胃酸や胆汁酸で大半が死滅してしまい生きて大腸まで届けることは困難です。しかし、死んでしまった菌でも腸内で善玉菌のエサとなることで一定の効果が期待できます。
近年では一般的なビフィズス菌と比べて酸に強い菌株も見つかっています。酸に強く胃酸や胆汁酸に負けずに生きて大腸まで届くビフィズス菌には、Bb-12株、BB536株、BE80株、HN019株などがあります。
食生活を工夫してぜん動運動を促そう
肉類は悪玉菌の大好物
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ぜん動運動を促して便秘を解消するためには、乳酸菌を摂るだけではなく食生活の工夫も必要です。たんぱく質やアミノ酸が豊富に含まれる肉類は悪玉菌の大好物です。
肉食に偏った食生活を送っていると腸内で悪玉菌が増殖しやすい環境が出来上がります。腸内で悪玉菌が優勢になると善玉菌の数は減少して、腸そのものの働きを停滞させてしまいます。これではぜん動運動を促すことはできません。
食物繊維を摂ろう
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一方で積極的に摂りたいのは食物繊維です。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。
果物、芋類、海藻類などに豊富に含まれている水溶性食物繊維は善玉菌のエサとなります。野菜、豆類、きのこなどに豊富に含まれている不溶性食物繊維は便のカサを増して腸を刺激して、ぜん動運動を活発にさせ便通を促してくれます。どちらの食物繊維もバランスよく摂る必要があり、理想の割合は水溶性1:不溶性2です。もちろん肉類を食べてはいけないわけではありませんが、悪玉菌を繁殖させないために、食物繊維を豊富に含んだ野菜や果物を積極的に摂りましょう。
朝食をしっかり摂ろう
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食事の時間も大切です。不規則な生活やダイエットなどを理由に朝食を抜いている方もいますが、朝は腸が最も活発になる時間です。
朝食を毎日しっかり食べる習慣をつけ、食べるメニューも工夫しましょう。成人が一日に必要な野菜の量は350gと言われています。野菜や果物をたくさん摂れるサラダや野菜ジュース、乳酸菌が摂れるヨーグルトや漬物などのメニューを組み合わせましょう。
腸の冷え対策にホットヨーグルト
ホットヨーグルトで腸を温める
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腸にとって冷えは大敵です。寒い季節はどうしても体が冷えてしまいますし、夏場は冷たいものの摂りすぎで体を冷やしがちです。腸が冷えてしまうとせっかく乳酸菌を摂っても腸機能そのものが低下してしまうため、本来の働きをすることができません。
冷え性は女性に多い症状ですが、それは男性よりも筋力が弱く運動量も少ないためです。運動することも大切ですが、寒い季節は温かい食べ物を摂ることで腸を冷やさないようにしたいものです。そこでおすすめなのがホットヨーグルトです。乳酸菌は35~40℃で最も活発になるため、ヨーグルトを温めることで乳酸菌の働きを活性化させつつ腸の冷えを予防することができます。
腸が温まりぜん動運動が活発になると基礎代謝も向上するため、カロリーを消費しやすくなるというメリットもあります。寒い季節は通勤や買い物などの外出中に冷気に当たることで体が冷えてしまいますから、お出かけ前の食事にホットヨーグルトを取り入れてみてはいかがでしょうか。
ホットヨーグルトの作り方
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【材料】ヨーグルト 100g はちみつ 適宜 水 大さじ1
1)耐熱性のあるグラスやカップに材料を入れる。
2)ラップをせずに、電子レンジで1000Wで20秒程度加熱する。
3)電子レンジから取り出して、なめらかになるまでスプーンでよく混ぜる。乳酸菌は熱に弱いため高温で加熱すると死滅してしまいます。40℃を超えないように加熱しすぎには注意しましょう。目安はほんのり温かく感じられる「人肌」程度です。
ヨーグルトは温めると酸味が増すため最初は違和感を持つこともありますが、冷たい状態よりも口当たりがやわらかくまろやかさが増します。食べ慣れてくると美味しさにハマるかもしれません。ただし、あまり時間を置くと発酵が進んで酸味が強くなるため温めたら早めに食べましょう。
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