乳酸菌の培養方法
研究者が行う乳酸菌の培養
乳酸菌を観察するためには培養する必要がある
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私たちがヨーグルトなどの食品やサプリメントから摂っている乳酸菌は、ヨーグルトや漬物などの発酵食品、人間や動物の体内や糞便から見つかっています。
新しい乳酸菌が発見されると、まずその菌がどのような性質を持つのか、どのカテゴリーに分類されるのか調べるために培養する必要があります。
微生物である乳酸菌はとても小さいため、培養しないと確認することが出来ません。培養することでコロニーが形成されて、肉眼でもはっきりとその姿を捉えることが出来ます。
最初に乳酸菌の培養に成功した研究者
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乳酸菌の培養方法を最初に確立したのはドイツの科学者であるコッホです。それまでは液体に培地を作って菌を培養していましたが、混入している他の菌を取り除くのが困難という課題があります。
そこでコッホは固形培地を作ってその上に菌のコロニーを形成させる方法を確立しました。固形培地を作ることで他の菌が混入していても、固体の一部をコロニーごと取り除くことができます。これは「平板培養法」と呼ばれる方法です。
コッホの確立した培養方法によって乳酸菌研究は大きく進化し、さまざまな種類の乳酸菌やビフィズス菌が発見されました。
寒天培地を作って培養する方法
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コッホが確立した培養方法が進化したのが、寒天培地を使った「希釈平板法」です。
まず乳酸菌を含む物質、人間の腸内に生息する菌を培養する場合は便を採取して、その重さを測ります。次に無菌の希釈液で10倍に薄めてから均等になるまでよく振ります。
この希釈液に炭酸ガスを吹き込んで、100倍、1000倍と薄めていきます。その液体を寒天培地の入ったシャーレと呼ばれるガラス製の平皿に垂らします。
乳酸菌は希釈液の中に生息していますが、この作業を行うことで菌を培地に移すことができます。あとは乳酸菌の発育に適した一定の温度(37℃)に保ち、2~3日培養するとコロニーができます。
このような作業によって100万~1000万倍まで希釈した液体を寒天培地で培養すると、数億~数十億の菌からなる大きなコロニーが作られます。肉眼でも捉えることができ、個々の菌を詳しく観察することができるようになります。
単一の菌のみを取り出す必要がある
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しかし、この状態では特定の乳酸菌だけでなく他の菌も混ざっているため、寒天培地から菌を分離して別の培地に移してさらに培養します。すると単一の菌からなるコロニーが作られます。
それでもまだ違う菌が混ざっている場合はさらに同じ作業を繰り返します。このようにして単一の菌のみを取り出すことを「純粋培養」と呼びます。このような菌の培養は研究者の手作業で行うことが基本です。それは他の菌が混ざっている寒天培地に作られたコロニーから、単一の菌のみを正確に取り出して別のシャーレで純粋培養する必要があるからです。
二種類以上の菌を一緒に取り出すことなく、単一の菌のみを取り出すことができるかどうかは科学者の技術と経験にかかっています。
研究と聞くと最新の器機を使っていると思いがちですが、ヨーグルトなどの製品が私たちの口に入るまでには、このような地道な作業が繰り返し行われているのです。
乳酸菌の培養は家庭でも出来る
研究者が行う寒天培地を使った培養は特別な技術が必要ですが、乳酸菌の培養そのものは家庭でも気軽に挑戦することができます。
乳酸菌を培養してヨーグルトを作ってみよう
種菌のヨーグルトから培養する方法
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乳酸菌を培養して作る食品としてポピュラーなのがヨーグルトです。原料の牛乳に含まれる乳酸菌を培養することでヨーグルトが作られます。
ところが市販されている牛乳は殺菌処理されているため、乳酸菌が死滅しています。低温殺菌した牛乳であれば乳酸菌が生きた状態で生息していますが、菌の数がとても少ないため培養は困難です。
そこで市販のヨーグルトを種菌として添加して乳酸菌を培養しましょう。ほかにも市販の乳酸菌末を加える方法があります。【材料】牛乳 500ml 市販のプレーンヨーグルト 大さじ2
熱湯で殺菌した蓋が出来るガラス容器に牛乳を注いでヨーグルトを加えてよく混ぜます。乳酸菌が活発に活動する35~40℃に保ち、そのまま7~12時間置いて発酵させ、固まったら完成です。冷蔵庫で保管して2~3日以内に食べ切りましょう。
家庭では温度管理が大変ですが、ヨーグルトメーカーを使うことで比較的簡単に作れますのでぜひ試してみてください。
雑菌の混入に注意
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乳酸菌が活発に活動する35~40℃は雑菌にとっても心地よい温度です。乳酸菌の培養に成功すると、牛乳に含まれている乳糖を分解して乳酸などの有機酸が作られ、pHを下げてくれます。
原料のpHが下がり酸性に近づくことで雑菌が多少混入していたとしても、活動することができず死滅するため、腐敗を防ぐことができます。
しかし、乳酸菌の培養が進まないと原料の中で雑菌が優勢となり、腐敗してヨーグルト作りに失敗してしまいます。
つまりヨーグルト作りを成功させるためには、いかにして雑菌の混入を防ぐかが重要になります。容器やスプーンなど使用する道具を必ず最初に熱湯で消毒し、新鮮な牛乳とヨーグルトを使ってください。
常温で培養するカスピ海ヨーグルト
家森氏が日本に持ち帰ったヨーグルト
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カスピ海ヨーグルトは、家森幸男氏が東ヨーロッパのジョージアから日本に持ち帰ったことがきっかけで日本中に広がりました。
独特の粘り気となめらかな食感、酸味の少ないまろやかな味わいが人気となり、一時はブームを引き起こしました。このカスピ海ヨーグルトを作っているのがクレモリス菌と呼ばれる乳酸菌です。
EPSと呼ばれる多糖のネバネバ成分を作り出すのが特徴で、カスピ海ヨーグルトに粘り気を与えています。
カスピ海ヨーグルトは20~30℃の常温で発酵する
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クレモリス菌は普通の乳酸菌とは異なり、20~30℃の常温で発酵するのが特徴です。そのためヨーグルトメーカーを使わなくても家庭で簡単に手作りすることができます。
【材料】牛乳 500ml カスピ海ヨーグルト用粉末種菌 1包(3g)
作り方は牛乳を熱湯で消毒した蓋をできる容器に注いで、カスピ海ヨーグルト用の粉末種菌を加えてよく混ぜます。
これを20~30℃で24~72時間置いて固まったら完成です。品質を保つために冷蔵庫に移してください。冬以外であれば室内に放置しておくだけでヨーグルトが出来ます。冬場は暖房の効いた暖かい部屋に置いて適温に保ちましょう。
気温が高いと早く固まり、気温が低いと固まるまでに時間がかかります。30℃以上になると雑菌が繁殖するので、夏場は日光が当たらず風通しが良くて涼しい場所に置いてください。
植物性乳酸菌を培養して作る漬物
植物性乳酸菌は低温でも発酵する
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ぬか漬けやキムチなどの漬物類、味噌や醤油、甘酒などに生息している植物性乳酸菌は、ヨーグルトを作る動物性乳酸菌とは違い、低温でも発酵するのが特徴です。
そのためヨーグルト作りのように細かな温度管理を行わなくても、冷暗所に置くだけで培養することができます。
野菜をただ漬け込んでも乳酸発酵させることは難しい
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昔は多くの家庭で漬物を手作りしていました。植物性乳酸菌は野菜や穀物の表面に生息しています。
とはいえ野菜や穀物に生息している菌の数は少なく、野菜をただ漬け込んだだけではなかなか乳酸発酵してくれません。
また野菜や穀物には乳酸菌だけではなくさまざまな微生物が生息しています。もちろん雑菌も生息していますから、乳酸菌ではなく雑菌が繁殖して腐ってしまう恐れがあります。
ぬか漬けがおすすめ
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そこでおすすめなのが米ぬかの乳酸菌を培養して作るぬか漬けです。米ぬかには乳酸菌が豊富に含まれています。
ぬか床に野菜を漬け込んで、毎日のように手で混ぜる、これを繰り返すことで乳酸菌が活発に働いて発酵が進みます。興味のある方はぜひ挑戦してみてください。
自分の腸内で乳酸菌を培養する方法
腸内の乳酸菌やビフィズス菌を培養して腸の健康を保つ
乳酸菌の培養は私たちの腸内でもできます。腸内には500種類以上、100兆~1000兆個もの細菌が生息し、それぞれ種類ごとにまとまり腸内フローラを形成しています。
腸内細菌には体に有用な善玉菌と体に害を及ぼす悪玉菌、そのどちらにも属さない日和見菌がありますが、善玉菌と悪玉菌は絶えず勢力争いをしています。
腸内環境を良好に保つためには、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を優勢にすることで、悪玉菌を抑制する必要があります。
つまり自分の腸内で乳酸菌やビフィズス菌を培養することこそが、腸の健康を保つ秘訣なのです。
ヨーグルトや漬物から善玉菌を摂ろう
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自分の腸内に生息する乳酸菌やビフィズス菌を培養する方法として、一般的に推奨されているのがヨーグルトや漬物から乳酸菌やビフィズス菌を積極的に摂る方法です。
これらの菌が生きて腸まで届けば、糖を分解して乳酸や酢酸といった大量の有機酸が生成されます。それによって腸内のpHが下がり酸性に近づくことで、もともと生息していた善玉菌を活性化して悪玉菌を抑制することができます。
また菌が胃酸や胆汁酸で死滅してしまっても、菌体が腸に届くことで善玉菌のエサとなり増殖を促す働きがあります。
食物繊維とオリゴ糖を摂ろう
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自分の腸内に生息する乳酸菌やビフィズス菌を培養するためには、新しい菌を送り込むだけでは不十分です。乳酸菌やビフィズス菌は小腸で消化しきれなかった糖をエサにして活動しています。
しかし、果糖やブドウ糖などの単糖類、ショ糖(いわゆる砂糖)などの二糖類は小腸ですぐに分解、吸収されてしまうためエサになることはありません。
そこで食物繊維やオリゴ糖など小腸で分解されない糖類を摂ることで、腸内に生息する乳酸菌やビフィズス菌に十分なエサを供給する必要があります。
野菜と果物には食物繊維とオリゴ糖が両方含まれていますから、食生活を見直して野菜と果物をたくさん食べるように心がけましょう。
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