乳酸菌シロタ株の効果は?
乳酸菌シロタ株とは
乳酸菌シロタ株は正式にはラクトバチルス・カゼイ・シロタ株と呼ばれ、後のヤクルト創始者である京都帝国大学(現京都大学)の医学博士代田稔によって発見されました。
形は細長い棒状をしていて、酸素があってもなくても生きることができる通気嫌気性菌です。
酸に非常に強い性質を持つことから、胃酸や胆汁でほとんど死滅することなく生きて腸まで届くプロバイオティクスの乳酸菌です。
乳酸菌シロタ株は腸内で乳酸を作り出すことで善玉菌の増殖を助け悪玉菌を減らし、有害物質を減らすことで腸内環境を改善します。
シロタ株はヤクルト菌とも呼ばれ、ヤクルトが製造販売する多くの乳製品に使われています。
シロタ株の歴史
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昭和初期の日本では食糧事情が悪く、栄養失調や不衛生な環境によるチフスなどの腸管感染症で多くの人が命を落としていました。
そんな状況を少しでも改善しようと京都帝国大学に進んだ代田稔は医学博士となり、病気の感染を未然に防ぐ「予防医学」を提唱します。
やがて「腸が健康になってこそ人も健康になれる」ことに気づき、腸内の善玉菌のひとつ乳酸菌に着目し、数年かけて約100種類の菌を調べます。1930年、強い酸性培地で乳酸菌を培養していた代田博士は、耐酸性が高い有望な乳酸菌を選び出します。この乳酸菌を人工胃液を使って少しずつ強化していきました。
研究を始めておよそ9年、ついに胃酸や胆汁に負けない乳酸菌の開発に成功します。この乳酸菌には、発見者である代田の名前をとって、乳酸菌シロタ株と命名されました。1935年、シロタ株を使った乳酸菌飲料「ヤクルト」の販売が始まりました。現在ではシロタ株を使った多くの乳製品が特定保健用食品の許可を得ています。
シロタ株の研究は発見から80年以上経ったいまでも続いていて、近年ではその研究の場を国際宇宙ステーションまで広げました。
シロタ株の効果
優れた整腸作用
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胃酸や胆汁でほとんど死滅することなく生きて腸まで届くシロタ株は、優れた整腸作用を発揮することがこれまでの研究で分かっています。
シロタ株を含む飲料を摂ることで、腸内にもともと住んでいたビフィズス菌が増えて、大腸菌群が減少することが認められています。
便秘と下痢の症状に対する有用性も高く、シロタ株生菌製剤を投与することで便秘は53.5%、下痢は74.5%の患者に効果が認められました。
健康な人10名を対象に行った試験では、シロタ株を100億個以上含む飲料を4週間摂ってもらったところ、腸内のビフィズス菌は3倍近くに増え、大腸菌群は約1/5に減りました。
免疫力を高める
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私たちの腸には免疫細胞の約7割が集中しています。その中の一つマクロファージをシロタ株が刺激することで、低下した免疫を回復させると考えられています。
ほかにもシロタ株には、がん細胞やウイルスに感染した細胞に働きかけるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させることで免疫力を高める作用があります。
さらに生活習慣の悪化、ストレスや加齢によって低下したNK活性(NK細胞の働きの強さ)を回復させる効果も認められています。
試験では喫煙習慣があるが健康な20~60歳の男性50名を対象に、シロタ株400億個を含む乳飲料を毎日1本3週間摂ってもらい、飲用前後の採血でNK細胞の働きを調べました。
これまでの研究では喫煙者は非喫煙者よりもNK活性が低いことが分かっていますが、試験の結果、シロタ株を摂ることでNK活性が平均値を上回ることが認められました。
69~97歳の高齢者10名を対象に行った試験では、シロタ株400億個を含む乳飲料を1日1本、3週間摂ってもらいました。
その結果、シロタ株を摂ることでほとんどの被験者のNK活性が高くなり、もともとNK活性が高い人も維持されることが認められました。
インフルエンザの予防効果
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シロタ株によってNK細胞が活性化されることで、インフルエンザウイルスに対する感染防御効果があることが動物を使った試験で証明されています。
アレルギー症状を改善
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私たちの体は病原体の侵入を防ぐため、免疫細胞のひとつであるB細胞にIgE抗体を作らせ、その量をコントロールしているのがヘルパーTh細胞です。
ヘルパーTh細胞にはTh1とTh2がありますが、この二つのバランスが乱れると、Th2細胞が優位となりインターロイキンと呼ばれるタンパク質が分泌され、B細胞にIgE抗体を大量に作らせてアレルギー症状が発症する仕組みです。
またTh1にはインターフェロンを作ることでTh2に働きかけIgE抗体の生成を抑制することができます。
シロタ株にはTh1を活性化することで、Th2を抑制してアレルギー症状を軽減する働きがあることがマウスを使った試験で認められています。スギ花粉症患者55名を対象に行った試験では、シロタ株を含む乳飲料を1日1本8週間摂ってもらい、自覚症状や服薬などを記録してもらいました。
さらに定期的に医師の診断と血液検査も行いました。その結果、花粉飛散量が増えるに従って症状は悪化したものの、症状のピークが少なくとも1週間は遅くなることが認められました。
ノロウイルス、感染性胃腸炎を軽減
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シロタ株はノロウイルスが原因で発症した、感染性胃腸炎の症状を軽減する作用が認められています。
介護老人保護施設で入所者39人を対象に行った試験では、シロタ株400億個を含む乳飲料を1日1本3ヶ月間摂ってもらい、健康状態を記録してもらいました。
さらに嘔吐と下痢を発症した10名については、原因がノロウイルスであるかどうか検出キットで確認しました。
その結果、ノロウイルス感染性胃腸炎の発症数に関しては差はありませんでしたが、シロタ株を摂ることで感染性胃腸炎による37℃以上の発熱日数が短縮することが認められました。
また38℃以上の発熱がある場合には合併症を防ぐために抗菌薬を使用しますが、シロタ株を摂った人で抗菌薬を使用した方は1人も居ませんでした。
このことから嘔吐物による肺炎などの合併症を抑える効果が期待できます。
大腸がんの予防効果
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シロタ株には大腸がんを予防する効果が認められています。
大腸腫瘍を2個以上持つ人は普通の人よりも4~7倍も大腸がんになりやすいことが分かっています。そこで大腸腫瘍が2個以上見つかった40~65歳の男女(腫瘍を全て摘出して完治した)380名を対象に行った試験では、対象者を4つのグループに分けて、それぞれ異なる食事指導を行い、このうち2つのグループにはシロタ株を摂ってもらいました。
その結果、シロタ株を摂ったグループは、摂っていないグループよりも腺腫(良性の腫瘍)の発生が若干低くなることが認められました。
さらに腺腫の異型度(正常な細胞に比べてどれくらい形状が異なっているかを示す指標。高くなればがんのリスクも上がる)で中等度以上の異性度を持つ腺腫の発生を調べました。
その結果、シロタ株を摂った人は相対危険度が2年目で20%、4年目では35%低下することが認められました。
乳がんの予防効果
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シロタ株には乳がんの発症リスクを下げられる可能性があることがこれまでの研究で分かっています。
40~55歳女性、初期がんで術後1年以内の306名と、比較対象としてこれらの方たちと年齢、居住地域などが似ている健康な人662名に行った調査では、10歳~12歳、20歳頃、10~15年前それぞれのライフステージで、発酵乳や大豆をどれくらい摂ってきたかの聞き取りを行い、アルコール摂取状況を含む食生活、運動、病歴、家族病歴などについても調査票に記入してもらいました。
その結果、シロタ株を含む乳製品を週4回以上摂取していた人は11.1%、比較対象グループでは16.2%でした。
この調査によってシロタ株を含む乳製品を習慣的に摂っていた人は乳がんの発症リスクが35%低下することが認められました。
ほかにもシロタ株と大豆イソフラボンを両方摂ることで、乳がんの発症リスクを軽減できることが認められました。
膀胱がんの予防効果
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シロタ株には膀胱がんの再発を抑制する効果が認められています。内視鏡によって表在性膀胱がんを切除した125名を対象に行った試験では、2つのグループに分けて、そのうち61名にはシロタ株生菌製剤を1日3包1年間、またはがんが再発するまで摂ってもらいました。
その結果、1年後の再発率はシロタ株を摂っていないグループは45.1%、シロタ株を摂ったグループは20.8%と、膀胱がんの再発を抑制する効果が認められました。
また試験中にがんが再発した方に対しては、試験前に切除したものとがんの悪性度を比較しました。その結果、シロタ株を摂った人は改善した人が10名で、悪化した人は1名だけとなりました。
これによって、シロタ株には膀胱がんの再発を抑制するだけでなく、再発したとしてもがんの悪性度を下げる効果があることが分かりました。
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