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乳酸菌って微生物?

乳酸菌は生きている?

ヨーグルトで知られる乳酸菌は整腸作用をはじめさまざまな健康効果が期待できることから、健康成分としてすっかり日本に定着しました。
乳酸菌は「糖を分解して乳酸を多量に作り出す菌」の総称です。具体的には「ブドウ糖に対して50%以上の乳酸を産生する」ことが条件です。
乳酸菌以外にも乳酸を生成する細菌は多く存在しますが、それらは乳酸を生成する割合が少ないため乳酸菌には入りません。

では乳酸菌は生きているのでしょうか? 答えは生きています。乳酸菌は細菌の仲間でとても小さな生き物です。
細菌は約35億年前に地球上で誕生した最古の生き物とされていて、遺伝子レベルで見るとヒトの遺伝情報も乳酸菌の遺伝情報も全く同じ記号でできています。

生物の定義とは

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乳酸菌が含まれるヨーグルトには、他にもタンパク質や脂質、糖質などのさまざまな成分が含まれています。これらの成分は乳酸菌のように生きているのでしょうか。
その前に生物の定義について説明する必要があります。生物をどう定義するかはとても難しい問題で、「動いているから生物だ」では明確な説明にはなりません。

生物は簡単に言って以下の3つの重要な機能を有しています。

1)代謝を行う
2)自己複製する
3)恒常性の維持

生物は自分の複製=子孫を作る能力を持っています。人類がこれまで出会ってきた生物は、親から生まれ、成長して、子孫を作り、やがて死を迎えます。このときに、親から子へとDNAが引き継がれます。
外部から栄養素などを取り込み、体内で自分の体を構成する物質を作り出す現象を代謝と言います。そして、外部から取り込んだ物質で体内が大きく変化しないように維持し、細胞の死滅や新生などの生物としての恒常性を維持します。この3つが揃った物質が生物です。

この生物の定義を乳酸菌にあてはめると、糖を代謝して乳酸を生成し、自ら増殖することができ、その機能を維持することから紛れもなく生物です。
一方、同じヨーグルトに含まれている成分でもタンパク質は20種類のアミノ酸が鎖状に多数連結してできた高分子化合物です。生物を構成する重要な成分ですが、自ら代謝を行うことはできませんし、自己複製もできないため、生物ではありません。

微生物としての乳酸菌の特徴

微生物とは目に見えない小さな生き物のことです。その中には細菌、酵母、ウイルス、カビ、微細藻類、原虫などが含まれますが、細菌の仲間である乳酸菌も微生物です。

働き

細菌は外側に固い細胞壁を持つ単細胞の微生物です。
細菌には病気の原因となる有害なものや、食品を腐らせる腐敗菌もありますが、一方で、食品の保存性を高めたり、体内で悪玉菌を抑制したり、免疫力を高めることで病原菌から身を守る有用なものもあり、その代表が乳酸菌です。

大きさ

微生物の大きさはほとんどが1mm以下で肉眼では見ることができません。カビのように目に見える微生物もよく見ると無数の細胞がくっついた集合体です。
乳酸菌の大きさは種類によって異なりますが0.5~10μm程度と微小です。1μmは0.001mmですから顕微鏡を使わないと見ることの出来ない大きさなのです。

微生物にはいろいろな形があり、球形や棒状のもの、螺旋状になったものなどがあり、中にはカビのように、木の幹のような菌糸が複雑に絡みあった微生物もいます。
乳酸菌は形によって棒状をした「乳酸桿菌」、丸い球状をした「乳酸球菌」、増殖する際にV字型やY字型に枝分かれする「ビフィズス菌」の3つに分かれます。

酸素の好き嫌い

微生物には酸素を好む好気性生物、酸素を嫌う嫌気性生物、酸素のあるなしに関わらず生息できるが、比較的酸素の少ない環境を好む通性嫌気性生物などがありますが、乳酸菌は通性嫌気性が多く、ビフィズス菌は酸素を嫌う嫌気性です。

乳酸菌が生息する場所

動物の乳や植物、自然界のあちこち

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微生物はとても小さいため地球上のさまざまな場所に生息することができ、風に乗ってどこにでも飛んで行けます。
乳酸菌も自然界のさまざまな場所に生息しています。
ヨーグルトやチーズなどの乳製品は動物の乳に生息する動物性乳酸菌によって作られます。生ハムやアンチョビにも動物性乳酸菌が生息しています。
野菜や穀物などの植物には植物性乳酸菌が生息していて、これらが発酵することで漬物、味噌、醤油などの発酵食品が作られます。さらに乳酸菌は空気中を飛散していたり、土の中や海の中にも生息しています。

環境に合わなければ生きられない

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しかし、どんな場所に行けるといっても環境が合わないと生きることができません。ほとんどの乳酸菌は熱に弱いため、100℃で加熱するとほんの数秒で死滅してしまいます。
動物性乳酸菌は他の微生物が居ない環境で生息しているため、酸に弱く他の菌と共存することができません。一方、植物性乳酸菌は栄養が乏しく厳しい環境下で生き抜いていたため、酸や塩分に強いのが特徴です。

人間の体内の生息場所

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乳酸菌は人間や動物の胃や腸といった消化管、さらには口内や膣内にもたくさん生息しています。人間の腸内には500種類以上、数にして数100兆個もの細菌が生息していて、
善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分かれ、種類ごとにまとまり腸内フローラを形成しています。乳酸桿菌と乳酸球菌は主に小腸に、酸素を嫌うビフィズス菌は大腸に生息しています。

微生物が行う発酵

発酵も代謝の一つ

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代謝を行うことが生物の定義と先述しましたが、乳酸菌が行う発酵も代謝の一つです。
発酵とは、乳酸菌や酵母菌などの微生物が、酸素の少ない環境でエネルギーを得るために有機化合物を酸化させて、アルコール、有機酸、二酸化炭素などを生成する過程のことを言います。
乳酸菌はブドウ糖や乳糖などの1分子の糖類を代謝することで、2分子の乳酸を生成し食品 を発酵させます。

発酵によって食品の酸味が増し、それによって味や香りが変化するだけでなく、食品のpHが下がることで雑菌の繁殖を防ぎ保存性を高めます。さらに乳酸菌には栄養価や旨みを増やす働きもあります。
人類は乳酸菌などの微生物を発見する遥か昔から、先人の知恵や経験の積み重ねによって食品を発酵させる技術を確立してきました。

乳酸菌が行う発酵には2種類ある

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この発酵には2種類があり、糖の全てを乳酸に変えるホモ発酵型と、乳酸のほかにエタノールや二酸化炭素も生成するヘテロ発酵型があります。
一方、乳酸菌の一部として扱われるビフィズス菌は乳酸菌とは少し異なる代謝を行い、乳酸のほかに酢酸も生成し、これもヘテロ発酵型の一種とされています。

発酵と腐敗の違い

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発酵と似た現象に腐敗があります。微生物は食品を発酵させることもあれば、腐敗させることもあります。乳酸菌が行う発酵は糖類が分解されて乳酸を作り出しますが、腐敗はタンパク質やアミノ酸などが分解されて、硫化水素やアンモニアなどの不快臭を出し、食品を腐らせてしまいます。
しかし、発酵によって糖類が分解された状態でも不快臭が出ることがあり、発酵と腐敗は意外にも似ています。
簡単に言ってしまえば食品をおいしく長持ちさせるのが発酵で、不味くして保存できなくすることを腐敗と呼んでいるのです。

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